《水都大阪 水辺散策手帖》エリア別水辺散策案内 4「東横堀川エリア」

【エリア別水辺散策案内】

地図に載っていない屋根のある川
東横堀川エリア

東横堀川は、大阪城の西惣構堀として最初に開削された堀川です。この堀川が大阪城下と船場の街を分割していました。後に東横堀川の真上に阪神高速１号線が建設されたことから、「地図に載らない川」となりましたが、現在も実在しており、「屋根のある川」として独特の景観を生み出しています。

東横堀川の形成

東横堀川は、豊臣秀吉の大阪城築城にあたり、西の守りとして天正13年（1585）に開削された最初の堀川です。慶長20年（1615）に大阪冬の陣で徳川方と豊臣方が和睦する際、大阪城の惣掘の一部であるので和睦の条件の通りに埋め立てられてしまいました。しかし、大阪夏の陣で大阪城が落城するとすぐに掘り返され、ほぼ同時に堀止から西へ道頓堀川が開削され、元和8年（1622）には末吉橋の下流側から西へ長堀川が開削され水上交通における重要な役割を担うことになります。
東横堀川の東側エリアには、「内本町」「内平野」「内淡路」「内久宝寺」と、頭に「内」がつく地名があり、西側には、呼応するように「本町」「平野」「淡路」「久宝寺」という地名があります。これは東横堀川を掘ったときに町が堀川で分断され、大阪城の「惣構（そうがまえ）」の内側に入ったエリアに「内」の文字を足して区別したためです。
昭和42年（1967）、東横堀川の真上に阪神高速１号線が建設されたことから、東横堀川の存在は、地図上からは消えてしまいましたが、現在も「屋根のある川」として存在しています。
令和3年（2021）、本町橋の上流に新たな水辺のパブリックスペースβ本町橋ができ、地域の交流が深まっています。また、川沿いに感度の高い飲食店などが集まり始めている注目のエリアです。

『写真浪花百景ノ内 高麗橋』長谷川貞信、1868年頃（大阪市立図書館デジタルアーカイブ）

『浪花百景 今橋つきじ』歌川国員、江戸後期（大阪市立図書館デジタルアーカイブ）

東横堀川水門

東横堀川の最上流(大川からの分岐点)に設けられた水門です。道頓堀川の最下流(木津川への合流点)にある道頓堀水門と対になって、水位の制御や高潮の防御、水質の浄化を行っています。船が水門を通行する際には、水面下で動いている水門のアームで船が座礁しないよう、船を近づけないように放水するのですが、その様子は、まるで船を歓迎するための噴水のようにもみえ、人気スポットになっています。また、満潮時には、水門を開いてきれいな大川の水を流入させて東横堀川と道頓堀川を浄化し、引き潮時には水門を閉めて寝屋川からの汚れた水が入らないようにコントロールしています。

東横堀川水門

道頓堀川水門

本町橋

大正2年(1913)に鉄橋として架け替えられた、大阪市内では現役として最古の橋で、市の指定文化財になっています。最初の橋は大阪城築城の頃、東横堀川を開削した時に架けられましたが、大阪市電の敷設に伴って現在のものに架け替えられました。

本町橋

β本町橋

令和3年(2021)にオープンした、新たな水辺のパブリックスペースです。規制緩和の流れを利用し、地域の人々や企業からなる「β本町橋共同事業体」と行政が一体になって開発、都心の水辺や公園を最大限活用しながら完成しました。レストラン＆カフェやレンタルスペース、SUP、クルーズなどから成り、マルシェやイベント、ワークショップ等が頻繁に行われて、地域の人々の交流の場になっています。

β本町橋

OSAKAリバーファンタジー 東横堀川エリア 水辺のプロジェクションマッピング

東横堀川の高麗橋から本町橋まで650mにわたる区間で、阪神高速道路の橋脚や橋の側面をプロジェクションマッピングで彩られています。

OSAKAリバーファンタジー 東横堀エリア 水辺のプロジェクションマッピング
出典：OSAKAリバーファンタジー運営事務局

本町の曲がり

川から分かれて南流する東横堀川は、本町橋あたりで少し東に曲がってから再び南流します。この不思議な流れはこの辺りにあった浄国寺を避けて開削したことによるといわれていますが理由は明確ではありません。ただ、この屈曲のため流れが急となり水難事故の多発地帯でした。上方落語「饅頭こわい」には、真夜中の曲がり辺りで身投げしようとする女性が登場します。怖い場所のイメージが広まっていたようで、付近の住民らは水難除けの「曲り淵地蔵尊」を祀ったといわれています。また、この曲がりにはかっぱ伝説も残っています。危険な場所にこどもが遊びに行かないよう「かっぱが出て川に引き込まれる」と注意していたのではないかといわれていますが、こちらも本当のところは解りません。

北側から見た「本町」の曲がり
川が東に大きく湾曲していることが視認できます。