《水都大阪 水辺散策手帖》エリア別水辺散策案内 2「八軒家浜エリア」

水都大阪 水辺散策手帖

水辺散策手帖MAP
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【エリア別水辺散策案内】

古代より水陸交通のターミナルとして栄えた
八軒家浜エリア

古代より水陸交通のターミナルとして栄えた八軒家浜は、現在も市内河川で最大の船着場を持つ水都大阪の拠点です。夕暮れ時に天満橋から西を眺めると、大川を切り裂くように中之島の剣先があり、その向こうに林立する高層ビル群、さらに向こうに沈む夕陽が印象的です。

八軒家浜

八軒家浜は太古の昔から水陸交通のターミナルでした。天満橋と天神橋の間にある八軒家浜は、平安時代には渡辺津と呼ばれる外港として、日本国内はもとより諸外国からの海の玄関口でもありました。また、四天王寺、住吉大社、高野山、そして熊野三山への参詣道である熊野街道の起点として、ここで船を下り陸路で参詣に向かう拠点として栄えました。
江戸時代には、淀川の伏見と八軒家浜との間を三十石船が往復し、京と大阪を結ぶ主要航路となっていました。船宿が8軒並んでいたことから「八軒家浜」と呼ばれるようになったと伝えます。伏見から下る夜便は、大川の流れにのって約6時間で八軒家浜に着きまいしたが、八軒家浜からの昼便は、流れに逆らって上らねばならず、川岸の船曳き人足が歩いて綱で船を曳き上りましたので、約12時間もかかって伏見に着きました。船は、全長約17m、乗客定員28名で、米を三十石積めたことから「三十石船」と言います。夜の下りであれば寝ている間に移動できるので、その便利さから利用者も多く、最盛期には上り下り合わせて1日320便、およそ9000人が往来したといわれています。
明治時代になると、蒸気機関を備えた外輪船も登場しました。最盛期には14隻が就航し、八軒家浜と伏見の間を、上りは6時間 、下りは3時間半で結んでいました。明治43年 (1910)に京阪電気鉄道が天満橋~京都五条間に開通したことにより、水上交通は電車に役割を取って代わられ、ここは電車のターミナル駅となりました。
この歴史的な場所に、平成21年(2009)、水都大阪のヒト・モノ・コトの交流拠点として、関西初の川の駅はちけんやが登場しました。水都大阪の情報発信基地であり、レストラン、ノルディック・ウォーク等の水辺のアクティビティの情報発信拠点の他、観光船のチケット売り場等があります。大川遊歩道に面した地下1階のステーション8では、セミナーや講演会、マルシェ、音楽会などが開催されています。現在、八軒家浜は川と陸との結節点として水都大阪の舟運の拠点となり、大川の流れや中之島剣先の噴水を眺めながら散策する人で賑わっています。

はちけんや

川の駅はちけんや(左)と再現された雁木と灯篭
八軒家浜には、かつての灯篭と雁木が再現されています。江戸時代、「浜」と呼ばれた川岸には、階段状の雁木があり、潮位が変わっても船の乗り降りができる港として活躍していました。かつて八軒家浜にあった灯篭は、現在、生魂國神社の境内に残っています。

はちけんや

川の駅はちけんや内のステーション8ではさまざまなイベントが開催されています。

はちけんや

『浪花名所図会 八けん屋着船之図』歌川広重、江戸後期(国立国会図書館デジタルコレクション)

はちけんや

「八軒家船着場の跡」碑(大阪市顕彰史跡)
天満橋駅から土佐堀通を挟んだ向かいにある永田屋昆布店の軒先に建っています。

はちけんや

『浪花百景 八軒屋夕景』歌川国員、江戸後期(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

天満橋

天満橋は、橋の南には大阪城や奉行所、北側にも幕府の役所や倉庫があったことから、役人の往来も多い橋で、寛永11年(1634)に公儀橋に指定されました。現在の天満橋は、第一次都市計画事業によって昭和10年(1935)に架け替えられたもので、「のびのびとした、鳥が翼を広げたような形」と表される優美さが特徴です。昭和45年(1970)には、交通渋滞を緩和するために、この橋の真上に新天満橋が建設され、2階建ての橋となりました。
平成23年(2011)には、「天が満つる光の架け橋」をテーマに、天満ガラス発祥の地を印象付ける天満切子模様を表現した橋桁のライトアップが施され、さらには、橋の裏にも水面を丸い光で照らす照明が設置されたのですが、この照明の中に1つだけ星形に照らすものが仕込まれていて、船に乗って見つけることができたらラッキー!ということで、いつしかラッキースターと呼ばれるようになりました。ぜひ船に乗ってラッキースターを探してみてください。

はちけんや

天満橋

はちけんや

ライトアップされた天満橋

はちけんや

船の床面に写し出されたラッキースター

天満青物市場

江戸時代、天満青物市場は堂島米市場や雑喉場魚市場とともに大阪三大市場のひとつでした。現在の天神橋1丁目から天満3・4丁目あたりの大川沿いに位置し、野菜や果物の取り扱いを行っていましたが、昭和6年(1931)の大阪市中央卸売市場設立によって廃止されました。南天満公園内に「天満青物市場跡」碑が残っています。

天満青物市場全景
出典:『大大阪画報』1928年、p.566(国立国会図書館デジタルコレクション)

明治初年の天満市場

『浪花百景 天満市場』歌川国員、江戸後期(大阪市立図書館デジタルアーカイブ)

「天満青物市場跡」碑

「天満の子守歌」碑

「天満青物市場跡」碑のすぐ川側に「天満の子守歌」碑があります。子守歌の歌碑と、ねんねこ半纏(ばんてん)で赤ん坊を背負った少女の銅像です。「天満の子守歌」は「天満の市」とも言いますが、その歌詞の前半だけを引いておきます。

ねんねころいち天満の市で 大根そろえて舟に積む 
船に積んだらどこまでゆきゃる 木津や難波の橋の下

天満青物市場が大川の河岸に設けられたのは、この歌詞のように船で青物(野菜類)を輸送するためでした。この少女は、市場で働く忙しい両親に代わって、赤ちゃんを子守りしているのでしょうか。

「天満の子守歌」碑

「淀川三十石船舟唄」碑

三十石船の発着場があった八軒家浜の対岸にある南天満公園内には「淀川三十石船舟唄」碑もあります。この舟唄は、京都伏見から大阪八軒家に下航する船上で、船頭衆が両岸の風景の移り変わりを歌い上げていく労働歌です。歌詞の最後、八軒家に到着間近の歌詞を挙げておきましょう。

ヤレサー ねぶたかろけどナー ねぶた目さませェ
ヤレー ここは大坂のェ八軒家
ヤレサー ヨイーヨイヨー

「淀川三十石船舟唄」碑

天神橋筋商店街

JR大阪駅から一駅のJR天満駅の南北に伸びる全長2.6kmの商店街です。天満切子や大阪土産の店など、老舗からニュースポットまで約600店舗がひしめき合い、賑わいを見せています。

天神橋筋商店街

大阪天満宮

「天満の天神さん」の愛称で親しまれている大阪天満宮は、平安中期の天暦3年(949)に創建されました。昌泰4年(901)、右大臣だった菅原道真は冤罪によって左遷されることになり、この地の大将軍社に参拝した後に太宰府への船路についたと伝えられます。その由来から同地に「天満天神(現大阪天満宮)」が建てられ、大将軍社はその境内社となりました。当時の漢詩には、大川岸に住まう船人や漁師たちが仕事終わりの夕刻に「天満天神」に参拝する様子が詠まれています。

大阪天満宮

天満天神繁昌亭

平成18年(2006)、戦後60年ぶりの落語の定席として建設され、落語を中心とし漫才や講談・浪曲などの寄席が開演されています。毎日の昼席・夜席のほか、日によっては朝席・深夜席も開かれていますので、大阪が「水の都」であるとともに「お笑いの町」でもあることを再認識できます。

天満天神繁昌亭

剣先噴水(中之島公園)

中之島公園の東端は、剣先の形状を船に見立ててデザインされています。噴水は船の先端部分、天神橋から中之島公園につながるらせんスロープと支柱は船のマストをイメージしています。まるで大川の流れを切り裂くように進む船のようです。噴水は通常10時から20時30分まで15分おきに水が出ています。

剣先噴水(中之島公園)

八軒家浜周辺から見る中之島

八軒家浜辺りから見る中之島の景観は、朝、昼、夜とそれぞれに表情を変えて美しく、水都大阪を象徴する景色です。

昼の中之島(下流を望む。手前の橋は天神橋。右は堂島川、左は土佐堀川)

夕暮れの中之島(中之島の向こうに太陽が沈む)

夜の中之島(中之島の高層ビル群の夜景が美しい)

令和OSAKA天の川伝説

「天満」の地名は、大阪天満宮の祭神「天満大自在天神」に由来します。その名は「天に満ちる星に疫病退散を祈願する天神」を意味し、その地先を西流する大川には、夜空の天の川が映り込み、その星影で川面が埋め尽くされたことから「天満川」とも呼ばれました。
平成21年(2009)、この地の文化を伝えるため「天の川伝説」が始まりました。以後、毎年7月7日の夜には、一人一人の願いを込めた青色に発光する「いのり星®(LEDによる光玉)」を大川に放流するのです。天満橋から天神橋の間の川面に何万個もの光玉が浮かぶ光景は、まさに地上に「天の川」が流れていくようで、新たな「水の都」の風物詩となっています。

令和OSAKA天の川伝説

OSAKAリバーファンタジー 八軒家浜エリア 噴水ショー

令和7年(2025)、大川右岸の護岸沿いに、幅約100mにわたる大型噴水が登場しました。水と光と音が織りなす噴水ショーが繰り広げられます。都心部の河川上で展開される噴水ショーとしては国内最大級を誇り、曲に合わせて演出する水のアートは、夜になると色とりどりにライトアップされ、水と光のスペクタクルを堪能できます。水のしぶき、音の振動、光のゆらぎが体感できるクルーズ船から観覧がおすすめです。令和8年(2026)2月頃まで開催予定。

OSAKAリバーファンタジー 八軒家浜エリア 噴水ショー 出典:OSAKAリバーファンタジー運営事務局

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